相続税対策は贈与から始めましょう!


平成27年から相続税が増税されます。
東京都内では2人に1人が相続税の申告が必要になるとまで言われているようで、
相続税対策を急ぐ方も増えています。

相続税対策は何からやればいいの?

相続税対策はまず現状の把握から行うのが良いと思います。

現状の財産の価値を把握して、相続税がかかるのか、かかるのであれば
どのくらいかかるのか、また、財産に対してどのくらいの割合で相続税がかかってくるのかを確認します。

この現状把握ができると、相続税対策で相続税がいくら安くなるのかということが分かるようになったり、どの相続税対策を行うのがベストなのかということも分かるようになります。

ある程度「財産の状況は分かっている」という方や、
「とりあえず相続税対策を実行したい」という方は、
まず比較的取り組みやすい「贈与」から始められることをお勧めいたします。

贈与とは?

贈与というのは、財産をある人に「ただ(無償)で差し上げます」と言って、
そのある人が「財産を受け取ります」と言う契約です。

贈与契約は、このように口約束(口頭)でも成立しますが、口約束の贈与契約については
実際に財産を渡す前であれば「やっぱりあげません」と取り消すことができます。

なので贈与を行う際は、税務署に対する証拠としても重要になるので贈与契約書を作成した方が良いです。
さらに証拠能力を高めるためにもお互いに署名押印もしておきましょう!

贈与が相続税対策でよく使われているのはなぜ?

贈与は相続税対策の王道ですが、なぜここまで贈与が利用されているかというと
手続きが比較的簡単だからです。
現金の贈与であれば、贈与契約書を作成して現金を移せば完了です。

一定額以上の財産をもらった場合は、財産をもらった人が税務署に贈与税の申告をして贈与税を払う必要がありますが、現金の贈与であれば申告書を作成するのも簡単なので、一般の方でも税理士にお願いすることなくご自身で申告できると思います。

また、贈与をする際に、不動産でなければ財産を移すための費用(移転コスト)
がほとんどかからない、子供や孫など幅広く財産を渡せるというのも理由の一つです。

実行がしやすくて、移転コストが少なくて、多くの親族に財産を渡せる
というのが贈与が選ばれている理由ではないでしょうか。

どのくらい贈与をするのが一番相続税対策になるの?

贈与が実行しやすいのは分かりました。
では、どのくらいの財産を贈与していくのが一番相続税対策になるのでしょうか。

これは、始めにお伝えした現状の分析ができていなければ正直分かりません。

相続税は財産をたくさん持っている人からは、より多く相続税を払ってもらうという仕組みになっています。

相続税の税率は平成27年から最大55%(例えば1,000万円の財産を相続すると550万円の相続税がかかる)、
最小10%(1,000万円の財産を相続すると100万円の相続税がかかる)です。

贈与税の税率も同様に最大で55%で最小で10%となっています。

贈与を活用して上手に相続税対策をするためには、相続税の税率がどのくらいになるのかを把握して、相続税の税率よりも贈与税の税率が低くなるように、贈与をする財産の金額を調整をしながら贈与していくことが重要です。

相続税と贈与税の税率のことを考えずに贈与をすると、
贈与をしたものの「贈与税ではなくて相続税で払ったほうがよかった」ということにもなりかねません。
極端な話、そもそも相続税がかからないのに贈与税を払っていたということもありえます。

相続税の税率が分からない場合は110万円以下の贈与を

贈与税は年間でもらった財産の合計が110万円以下であれば贈与税がかからないようになっています。
なので、現状の分析ができていなくてご自身の相続税の税率が分からない場合は、
この110万円以下で贈与を繰り返していくというのも一つの方法だと思います。

例えば子供2人に10年間、毎年110万円の贈与を続ければ2,200万円の財産を無税で移すことができます。
これでもかなりの金額ですね!

このように相続税対策は早めに実行すると、長い期間をかけて財産を移すことができるので
相続税を大きく減らすことができます。
相続税対策は早めに行いましょう!

ちなみに500万円の財産を贈与した場合の贈与税の金額は約50万円(実効税率は約10%)です。
財産が数億円以上ある方の場合は、相続税の税率が20%以上になることが多いので、
相続税の税率の半分以下の税率で財産を移せたということになります。

相続の時まで現金を500万円持っていた場合は、税率が20%だと100万円の相続税がかかりますが、事前に贈与をしておけば50万円の贈与税で済むので、50万円得をすることになります。
1回の贈与で50万円節税ができるのでこれを繰り返すだけでも相続税はかなり減りますね。

お持ちの財産が多い方は、ある程度贈与税を払って贈与をすることで
より多くの財産を次世代に移すことができ、相続税対策もできます。

贈与を使った相続税対策で注意したいこと

すぐに実行できるので、贈与を使った相続税対策は非常に有効ですが注意点もあります。

・相続人に対する相続開始前3年以内の贈与は相続税の計算に含める必要があります

例えばAさんが2014年の5月に亡くなりました。
Aさんは2013年に息子のBさんに現金1,000万円を贈与していたので、
亡くなった時には現金はありませんでした。
この場合でも、相続開始前3年以内に相続人に贈与した財産は相続税の計算に含める
必要がありますので、Aさんは亡くなった時点で現金を持っていませんでしたが、
息子のBさんにあげた1,000万円の現金を持っているものとして相続税の計算をする必要があります。
贈与した財産を相続税の計算に含める代わりにBさんが払った贈与税は相続税から控除できます。

このように、相続人に対する相続開始前3年以内の贈与は、相続税の計算に含めなおす必要があるので、せっかく相続税対策で実行した贈与が無駄になってしまう可能性もあります。

これを防ぐためには、相続税対策を早めに実行する、相続人ではない孫などに財産を贈与するという方法が有効です。

孫に対する贈与は、世代を1代飛ばせるという意味で相続税対策の効果が大きいです。
通常は、親から子へ、子から孫へ財産が移る都度、相続税がかかってくるはずですが、親から孫に贈与をすることで1回の贈与税だけで済みます。
ひ孫がいるとさらに一世代飛ばせますね。
相続税対策は長生きすることが重要なんです。
亡くならない限り相続税はかかりませんからね 🙂

・名義預金に注意!

税務署が一番注意深く見ているのがこの「名義預金」というものです。

名義預金というのは、例えば名義だけは息子の名前になってるけど、
預金の存在を息子が知らなかったり、息子が管理をしていなかったりして
実際は息子の財産ではなくて親の財産になっているような預金です。

これ、身近に結構あると思います。
祖父母が孫のために孫名義で預金をしているけど孫には教えていないというのも
名義預金になりますので孫の財産ではなくて祖父母の財産になります。
贈与しているつもりが贈与になっていないということがあるということです。

これを防ぐためには、

  • 贈与の契約書を作成してお互いに贈与があったということを認識しておく
  • 通帳の管理を本人にさせる
  • 通帳の届出印は家族で同じものを使用しない
  • 贈与税の申告をする

などきちんと贈与をしているという証拠を残すことが重要です。

・贈与は余裕資金の範囲内で

贈与が相続税対策になるからと言っても、ご自身の預金がなくなるまで贈与を続けるのは
賢明ではないと思います。
ご自身の今後の生活費のことも考えながら、あくまでも余裕資金の範囲内で贈与をしていきましょう。
最近は寿命が延びていますので、将来の生活費の負担も多くなる傾向にあります。

また、贈与をしたお金は将来の相続税を納めるための資金にもなりますので、全部使ってしまうようなことが無いように、あらかじめ贈与をする子供などに伝えておきましょう。

・連年贈与はあまり心配しなくても

贈与に関する記事で「連年贈与」には注意しましょう、というのをよく見かけます。
連年贈与というのは何かというと、複数年にわたって贈与を続ける場合は、
初めから複数年にわたって贈与することが分かっているのだから、
贈与の初年度に一括で贈与税を払ってくださいというものです。

例えば100万円を10年間にわたって贈与する場合は、
合計で1,000万円もらえることが初めから分かっているので
1,000万円に対する贈与税(厳密には少し複雑な計算が必要ですが)
を初年度に払ってくださいというものです。

ただ、毎年契約書をその都度かわしている場合はあまり心配をする必要はないです。
10年間にわたって100万円ずつ贈与をするという契約書があるわけではありませんし、
毎年贈与をしているからと言っても、いつまで続けるかは分かりません。
もしかしたら資金の都合で贈与をしなくなるかもしれませんし。

もし連年贈与と言われるのが心配な方は、贈与をする金額を変える、
贈与をする日付を変える、贈与をする財産を変えるなどで対策をすると良いと思います。

 

今回は贈与を使った相続税対策を解説いたしました。
贈与を使った相続税対策は実行がしやすいですが、上記のように注意するところもあります。
上記の注意点を考慮しながら贈与をしていきましょう!

また、時間をかけて対策をすることで対策の効果が大きくなりますので、
相続税対策は早めに行いましょう!

 

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相続税対策は贈与から始めましょう!” への5件のコメント

  1. 天才塾で名刺交換させていただいた税理士の小林です
    よくみたら古野先生だったのでコメントしました

    なかなか資産税分野お詳しいですね
    ブロクランキングお互い頑張りましょう!

    今後とも宜しく

    • 小林先生コメントありがとうございます!
      手探りでやり始めました。

      小林先生もお詳しいです。
      実践的なブログを書かれていて素敵です!

      今後ともよろしくお願いいたします。

    • ハマーさん
      コメントありがとうございます!
      励みになります。

      孫への贈与のところを少し追記しました。
      また遊びに来てくださいねー。

  2. ピンバック: 毎年贈与すると税務署は認めてくれないの? - 世田谷区若手(アラサー)税理士のブログ世田谷区若手(アラサー)税理士のブログ

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